2015年8月28日金曜日

【感想】 The Da Vinci Code

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The Da Vinci Codeを読み終わりました。
キリスト教はあまり詳しくありませんし、それにまつわる絵画もよく知らなかったのですが十分楽しめました。歴史かミステリーが好きであればオススメです。


あらすじ

ルーヴル美術館。パリにあるフランス国立美術館で発見された館長ソニエールの死体をきっかけに物語は動き出す。殺害当夜、ソニエールと会う約束をしていたハーヴァード大学教授ラングドンは容疑者として追われるが、館長の孫娘であるソフィーの助けによって警察から逃亡する。二人はソニエールが残した暗号をヒントに、真犯人が求める「聖杯」を探す旅に出る。館長が命を賭けて守った「聖杯」とは一体何なのか。

以下、書評という名の雑文です。


歴史は作り話

「歴史はつねに勝者によって記されるということだ。

ふたつの文化が衝突して、一方が敗れ去ると、勝った側は歴史書を書き著す。
みずからの大義を強調し、征服した相手を貶める内容のものを。
ナポレオンはこう言っている。
”歴史とは、合意の上に成り立つ作り話にほかならない”と」


「本来、歴史は一方的にしか記述できない」



本作のディービングと同じ考えの人が以前『ワンピース』にもいました。
歴史は勝者によって塗り替えられるとしたら、一体どこに真実の歴史などあるのでしょうか。嘘の歴史を学ぶ事で何を得られるのか、嘘の歴史を火種に喧嘩してどうなるのか、そんな事を考えながら読んでいました。真実が分からないからこそ「歴史は繰り返す」のかもしれません。


歴史を学ぶことは大事だと思いますし、歴史に基づいて政治についても議論するべきだと思っています。ただ今知っている歴史の大半が作り話であると考えれば、韓国や中国ともっと冷静に議論ができて、改憲問題ももう少しマシな議論ができると思います。


反逆者になる

そんな繰り返す歴史とは対照的に、科学は常に(良くも悪くも)進歩してきました。科学の世界では嘘がすぐにバレます。現象や法則に基づいて体系的に整理されているからです。

では科学の始まりはいつなのか、という点に関しては本作ではキリスト教の司教アリンガローサが触れています。


「科学と信仰の融合になんの意味があるのか。
神への信仰をいだく者が偏りなく科学を修められるはずがないし、逆に、信仰にはいかなる物質的な裏付けも必要ない。」


神を信じるものに科学は必要ない、つまり神を信じられなくなったか、神の仕打ちに耐えられなくなった人達が科学を始めたわけです。

『プラネテス』でこの心情をズバッと言った人がいました。


「真理の探究は科学者が自らに課した使命です。
”本物”の神はこの広い宇宙のどこかに隠れ我々の苦しみを傍観している。
いつまでもそれを許しておけるほど私は寛容な人間ではない。」
病気になったら死ぬしかないのはおかしい、
移動手段が徒歩だけなのはおかしい、
暗くなったら何も出来ないのはおかしい、
遠くにいる人と話せないのはおかしい。

これら神への不満が技術の進歩を促進してきたはずでした。

しかし昨今、そういった「神への怒り」とは程遠い技術が増えている気がするのは私だけでしょうか。


・電気、水、食糧はいずれ尽き果てる
・人口が増えれば、1人当たりの使える土地が減り移動・通信も難しくなっていく
・事故で手足を失った人達が今尚苦しい生活を強いられている


などなど、人類全体の問題は明白です。
重要度の高い技術に人員を割いて然るべきですし、そう考える「神への反逆者」が再び増えれば21世紀の産業革命も不可能ではないと信じています。


科学を楽しむ

そんな怒れる反逆者たちも、常に怒っているわけではありません。科学とは本来楽しいもので、その事は本作でも一貫して主張されています。


「ラングドンはそう言って、研究上の大発見をした折によく感じる興奮を味わっていた」


これは大学院や仕事で研究した事がある人間なら誰しも体験したことがあるはずのアレです。『アルジャーノンに花束を』でもチャーリィが短い人生の中でこれを経験しています。


「まどろみかけようとした時、答が閃いた。イルミネーションのように!
あらゆるものが、ぴったりとはまった。それははじめから分かっていたはずのことだった。」
これまで点として捉えていた情報が、ある日突然頭の中で繋がり、一つの像が浮かび上がるような感覚。
まるで星空の中で新しい星座を見つけたかのような感動に陥ります。

ミステリーも科学と似ていて、その事を筆者がよく理解しているのがラストシーンから伝わってきます。見事な「感動」の表現だったと思います。
終わり良ければ全て良し。
極上のミステリー、ごちそうさまです。

では。

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