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本日8月6日は広島で原爆が投下された日で、平和記念式典の一部をテレビで拝見しました。世界平和という言葉が度々出てきた事もあり、今日半日は世界平和の可能性について考えました。
原爆について
初めて原爆について知ったのは小学2年生の時、学校の図書館で読んだ「はだしのゲン」がきっかけでした。
一瞬ピカッと光った直後、街は爆風で破壊され、人々は焼けただれた皮膚をひきずり水を求めたーー想像力の乏しい小学生にとって、非常に鮮烈な絵だった事を強く覚えています。
なんとか熱風から逃れた人々も病気、差別に苦しみ、衣食住の何もかもが保証されない時代をあまりにリアルに描いているため、始めはフィクションとしか思えませんでした。
この広島で起きた惨状を現実に在った事だとしっかり理解したのは、中学の修学旅行で広島に行った時です。同じ記述が現実の写真と共にそこに在り、同じ話を被爆経験者が語って下さりました。
原爆の恐怖・戦争の恐怖を語り継ぎ、二度と同じ悲劇を繰り返さないことこそ肝要である、と言われ、その時は強く同意しました。しかし原爆を保持している国は70年経った今でも存在し、戦争も一向になくなる気配はありません。
もし本気で戦争をなくしたいのであれば、ただ悲劇を語り継ぎ危険性を訴えるだけではなく、もっと戦争のメカニズムについて知り、これまでにない対策を考えるべきなのかもしれません。
そんな事を考えていた折、『永遠のゼロ』の中で面白い口上を見つけたので紹介します。
永遠の0 第九章「カミカゼアタック」
これは百田尚樹著「永遠の0」の中で、特攻要員だった男・武田が若手新聞記者・高山に対して述べた口上の一部です。
「夜郎自大とはこのことだーー。
貴様は正義の味方のつもりか。
私はあの戦争を引き起こしたのは、新聞社だと思っている。
日露戦争が終わって、ポーツマス講和会議が開かれたが、講話条件をめぐって、多くの新聞社が怒りを表明した。
こんな条件が呑めるかと、紙面を使って論陣を張った。
国民の多くは新聞社に煽られ、全国各地で反政府暴動が起こった。
日比谷公会堂が焼き討ちされ、講和条約を結んだ小村寿太郎も国民的な非難を浴びた。
反戦を主張したのは徳富蘇峰の国民新聞くらいだった。
その国民新聞もまた焼き討ちされた」
さらに続きます。
「私はこの一連の事件こそ日本の分水嶺だと思っている。
この事件以降、国民の多くは戦争賛美へと進んでいった。
そして起こったのが五・一五事件だ。
侵略路線を収縮し、軍縮に向かいつつある時の政府首脳を、軍部の青年将校たちが殺したのだ。
話せばわかる、という首相を問答無用と撃ち殺したのだ。
これが軍事クーデターでなくて何だ。
ところが多くの新聞社は彼らを英雄と称え、彼らの減刑を主張した。
新聞社に煽られて、減刑嘆願運動は国民運動となり、裁判所に七万を超える嘆願書が寄せられた。
その世論に引きずられるように、首謀者たちには非常に軽い刑が下された。
この異常な減刑が後の二・二六事件を引き起こしたと言われている。
現代においてもまだ二・二六事件の首謀者たちは
『心情において美しく、国を思う心に篤い憂国の士』
と捉えられている向きがある。
いかに当時の世論の影響が強かったかだ。
これ以後、軍部の突出に刃向かえる者はいなくなった。
政治家もジャーナリストもすべてがだ。
この後、日本は軍国主義一色となり、これはいけないと気付いた時には、もう何もかもが遅かったのだ。
しかし軍部をこのような化け物にしたのは、新聞社であり、それに煽られた国民だったのだ」
そして最後、戦後については以下のように述べます。
「戦後多くの新聞が、国民に愛国心を捨てさせるような論陣を張った。
まるで国を愛することは罪であるかのように。
一見、戦前と逆のことを行っているように見えるが、自らを正義と信じ、愚かな国民に教えてやろうという姿勢は、まったく同じだ。
その結果はどうだ。今日、この国ほど、自らの国を軽蔑し、近隣諸国におもねる売国奴的な政治家や文化人を生み出した国はない」
以上が口上の一部です。
もちろん小説なので、全てが真実ではありませんし、全てが正しいとは言いません。しかしこの口上から学べることは多いと思ったので引用させて頂きました。
戦争につながるきっかけの一つ目。
それは、国民が新聞社の表明する「怒り」に煽られてしまうことです。人を統率する際に最も操りやすい人間は、怒っている人間です。
それを知っている新聞社たちは、選挙や事件のたびに巧みに国民の「怒り」を煽ります。一番怖いのがすぐデモ行進に参加するような怒りっぽい人達です。
そうやって煽られた国民をコントロールできなくなってしまった時が一番恐ろしいのだと、そしてそれが原因で戦争が過去に起きていると、上の口上では言っています。
そしてもう一つの戦争へのきっかけ。
それが、「自らを正義と信じ」て他人に「教えてやろうという姿勢」です。先の口上における新聞社も国民も、自分達の考えや行いを「正義」だと信じているため決してひるみません。そのため、自身の「正義」が分からない他人に同調させよう、「教えてやろう」という姿勢になりがちです。
上記二つ以外にも、政治家がまるでダメであればそれが原因で戦争につながるかもしれません。しかし、戦争の原因が国民や新聞社にもある限り、いくら上流の権力者が優秀で誠実な人間になっても戦争はなくならないんじゃないかということです。
新聞が言う事に一々怒らず冷静に聞き、自分の考え方とは違う人の考え方ももう少し真剣に考えるだけで、戦争が起きる確率は下げられるんじゃないか。
こう考えると、結構簡単に出来そうな気がします。けどそんな簡単じゃないと思うのでもう少し考えました。
怒りのコントロール
前述で、戦争予防法として
①怒りをコントロールする
②他人の考え方を尊重する
と綺麗事を並べましたが、実際これは両方ともかなり難しいのでもう少し具体化します。
まず①について。
人って結構些細な事ですぐ怒ります。飲食店でグラスが汚いとか、歩いていて肩がぶつかったとか、子供が言うこと聞かないとか。では人が一番怒る時っていつだろうと想像した時、中々想像つかないかもしれません。
私の場合は、
「理不尽に愛が奪われた時」
です。例えば兄弟を交通事故で失ったり、自分の子供が通り魔に殺されたりって意味です。友達や恋人でも怒ると思いますが、一番怒るのは大切な家族を奪われた時だと思います。
そういう状況で果たして怒りをコントロールできるのか。私はできません。想像するだけで血管キレそうです。そのため、常にそういう状況にならないように考えながら生きる必要があります。
そして常に最悪のケースを想定していれば、大抵の怒りはどうでもよくなります。
次に②について。
他人の考えなんてそうそう分かりません。が、相手が何に対して怒るかを観察し、なぜ怒るかを考えることで相手の立場に立てるのでは、と思ってます。
最後に口上を言った武田の怒りを一つ紹介して終わります。
「軽々しく平和という言葉を持ち出さないで貰いたい」
では。
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